学問ノススメ. 学校では教えてくれない達人の知恵 単行本(ソフトカバー) – 2012/4/26
p34
秋山仁
◆自分で判断しなければ、うまくいかない理由は「あいつが悪いから」になる。
p39
◆数学の定理には、一切の妥協を許さぬ真実があります。
この真実は多数決で揺るがされることもなく、また、思想や文化、人種、宗教、価値観の違いによって覆されることもありません。すなわちこの真実は未来永劫にわたって真実であり続けるのです。
たとえばあのピタゴラスの定理は、古代ギリシャ人にとっても、中世ヨーロッパ人にとっても、現代の私たちにとっても、真実であり続けるように。
この知性によって織りなされた真実という美は、不思議を感ずるアンテナを備えた人ならば、誰にでも手にすることができます。未見の美を発見したときの醍醐味は最高です。
福岡伸一
p50
◆壊してはつくる過程を繰り返すのが生物
絶え間なく動きバランスをとっている状態を動的平衡といいます。
それが実は生命現象や環境や自然や地球の状態を説明するのに、もっともぴったりな言葉ではないかと思っています。
20世紀半ばにDNAのらせん構造が発見されてから、細胞の中でDNAやたんぱく質はどういうふうにつくられるかという仕組みを研究してきました。
その仕組みは一通りしかなく、どんな植物も動物もその仕組みを使ってタンパク質を作っています。
が、タンパク質を作る方法は一通りしかないのに、壊す方法は何通りもあることが分かってきました。
つまり、細胞はつくることよりも壊すことのほうを一生懸命にやっているのだということが分かってきたのです。
生物は、最初から頑丈につくることは放棄していて、しかもつくることより壊すことを優先して絶え間なく壊すことを続けてきたのです。
そういう壊してはつくることを繰り返しているのが動的平衡という状態です。
なぜそんなことをしなければならないのか、それは、私たちの宇宙はエントロピー増大の法則が支配しているからです。
きれいに整理整頓しておいた机の上が日に日にぐちゃぐちゃになっていくように、私たちの宇宙では、すべての秩序あるものは秩序のない方向に動いていきます。それば、エントロピー増大の法則です。逆方向には動きません。熱いコーヒーが冷めていくのも、この法則があるからです。
生物は、宇宙の法則によって壊される前に、みずから恐し、またつくり、また壊してまたつくるという形で、エントロピー増大の法則の先回りをする、あるいは無効かしようとしているわけです。
このような、壊してはつくる過程を繰り返していることが生物を特徴づけている、もっとも重要な側面であって、その状態が動的平衡なのです。けれど、いくら先回りをしようとしてもサイトはエントロピーに追いつかれてしまいます。それが個体の死ということです。
◆動的平衡とは絶え間なく変わりながら変わらないというあり方
お金は循環していることがよい状態なのに、誰かが途中で貯めこんでいるから問題が起こる。
滞っているところに動的平衡を取り戻すにはどうしたらよいかを考えるときに、重要なのは時間軸です。
地上に降った雨は、何年もかけてきれいな湧水になるわけです。だから、今私たちがおこなったこともすぐに結果は出ないのです。何百年、もしかすると何千年も先に結果がやってくる。
そういうふうに時間軸をのばして考えれるかどうか。
現代社会では非常に効率が重視され、時間軸が分断されている。
動的平衡というのは、パフォーマンスが高いところがあれば必ず低いところもあって、長い目で見るとぼちぼちになるという考え方なので、効率という考え方の対極にあり、儲からない考え方でもあるわけですが、自然というのはそういうふうになっているわけです。
局所的な効率優先は全体の非効率につながるし、局所的な幸福は全体としては不利益につながるということです。
だから、動的平衡の考え方は、人生はぼちぼちでなるようにしかならないという諦観でもあるのですが、それが希望にもなるわけです。
動的平衡というのは、絶え間なく変わりながら変わらないというあり方です。
ジグソーパズルを思い浮かべていただくと、ピースの1個1個は絶え間なく新しく交換されているけれど、全体の絵柄は変わらないというイメージです。
そういうふうにして、地球も生命も動的に平衡状態を保っていると考えることができます。
それぞれの細胞はひとそりのDNAを持っているのですが、それぞれの細胞にあらかじめ「君は脳の細胞になりなさい」とか「肝臓の細胞になりなさい」というプログラムが書き込まれているのではありません。DNAというのは部品のカタログのようなもので、自分がどういう細胞になるか決まってからDNAから必要な部品を選ぶことになります。ではどういう細胞になるかはどうやって決まるかというと、前後左右、上下の細胞と空気を読み合いながら決まっていくわけです。
肝臓なら肝臓、筋肉なら筋肉に決まったのに、あるとき、自分がどういう細胞だったかわかならくなって増殖をはじめるのががんです。
だから、もしがんの本質的な治療法があるとしたら、それは「君はもともとは肝臓の細胞だろう。正気を取り戻しなさい。」とその細胞の肩を揺すってやる。そうすると、そのがん細胞がハッと我に返って「そうだった、僕は肝臓の細胞だったんだ」ともとに戻ってくれれば、がんは治るわけです。
しかし、過去100年間、最高の知性が研究を続けてがんの治療法を求めてきましたが、細胞が一度我を忘れてしまうと、もう一度聞く耳を持たせることはいまだにできていないわけです。
◆いろいろな見方を獲得することが学ぶことの本質
微分・積分ができたのは、1600年代ですが、
世界は絶え間なく動いているので、その動きを止めることができたら世界の全てを記述できるのではないかと考えた人がいるのです。そこで考え出されたのが微分・積分という方法です。
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