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2017年12月25日月曜日

投稿日 2017年12月25日月曜日

ニッポンの傑作パイロット 室屋義秀 - モノマガジン 2017年774号より

P18より

僕は20年前に「操縦技術で世界一になる」そう決めました。
それを続けている。
才能のある人はこれまでに多く見てきました。
ただ、多くは3年で飽きていく。
僕はしつこかっただけかもしれない。

室屋さんは、才能がないなら、人の倍練習すればいいと考える。
しかも、それは集中的に行うのではなく、ひたすらに継続するのだ。

「一日の1%は15分です。この15分を継続する。それが難しいが、たったそれだけでも、トータルの練習量は2倍以上になる。」

20年、飛行機に乗り続け、操縦技術で世界一になるという目標をある意味で愚直に目指し続けた室屋さんだからこそできたことなのかもしれない。


2017年8月11日金曜日

投稿日 2017年8月11日金曜日

読みかじり - パイロットになるには (なるにはBOOKS) 単行本(ソフトカバー) – 2017/1/30 阿施 光南 (著)

自社養成パイロットの募集に挑戦した人の例が紹介されている。

3章のなるにはコースが一番知りたい部分。

p124より

旅客機のパイロットになるためのコース

日本でエアラインパイロットになるコースは、基本的に4つだ。

①航空会社の自社養成パイロットとして採用される。
②独立行政法人(国立)航空大学校でライセンスを取って就職する。
③私立4年制大学でライセンスを取って就職する。
④民間飛行機学校でライセンスを取って就職する。


このうち費用が最も少ないのは航空会社の自社養成パイロットだ。
パイロットの採用試験を受け、合格すれば社員として訓練を受けられるので費用を自己負担する必要はない。
ただし、自社養成パイロットを募集している航空会社は少なく、競争率は極めて高い。

次に費用負担が小さいのは、国立の航空大学校だ。
学費や訓練費に加えて全寮制の生活費を含めて400万円あまり必要になるが、これは私立4年制大学操縦コースや民間の飛行学校の3分の1から4分の1程度である。

受験には大学2年修了以上あるいは短期大学、高等専門学校卒業以上の学歴が必要だが、その費用を含めても半分程度だろうか。

私立4年制大学操縦コースと民間飛行学校の訓練費用は、学校や訓練内容によって1200万円程度から2000万円以上とかなり幅がある。

基本的には4年制大学操縦コースの費用は、ライセンス取得のための訓練費用に大学の学費が加わるので訓練だけを行う民間飛行学校より割高になりそうだが、東海大学や桜美林大学のようにすべての操縦訓練を費用の安いアメリカで行う場合にはむしろ割安となる。

★大学2年修了で航空大学校に進学する場合は大学を卒業したことにならない(航空大学校は大学ではないので学士の資格は得られない)ため、航空大学校には大学を卒業したうえで入学する人が多いようだ。

航空会社の自社養成パイロットは大卒あるいは大学院修士以上の学歴を要求するうえ、入社してから地上職研修を1-2年は行うことが多い。


エアラインパイロットになる道を整理すると、高校時代にすでに志望が固まっていて高額な費用も払えるという人ならば4年制大学操縦コースに進学。
そうでない人は一般の(操縦コースでない)大学に進学して、2年修了見込みに段階から航空大学校の受験を開始。
そして卒業見込みの段階から自社養成パイロットに応募し、ダメならば民間飛行学校でライセンスを取るというのが一般的だ。
また4年制大学操縦コースには、すでに一般に大学を卒業した人を研究生などとして訓練する制度を設けている場合もあるので、民間学校ではなくそちらを選ぶ方法もある。


航空大学校の募集人委員は毎年72名以下だが、2018年からは1.5倍の108名に増員される予定である。
受験に必要な学歴は、4年制大学を2年以上修了しているか、短期大学、高等学校専門学校を卒業している(いずれも見込みを含む)ということ。また年齢は、入学の年の4月1日に25歳未満でなければならない。


エアラインパイロットの定年は2015年に68歳未満まで引き上げられた。




















パイロットになるには (なるにはBOOKS) 単行本(ソフトカバー) – 2017/1/30




2017年5月14日日曜日

投稿日 2017年5月14日日曜日

★パイロットの気持ちがたくさん書いてある。 - グッド・フライト、グッド・ナイト──パイロットが誘う最高の空旅 (ハヤカワ・ノンフィクション) 単行本(ソフトカバー) – 2016/2/24 マーク・ヴァンホーナッカー

★知人のパイロットも大好きな仕事だと言っていた。
この著者と同じ気持ちなのかなぁと思いながら読了。

著者のちょっとした表現がなかなか洒落ていて、楽しかった!

★最近、中東にもパイロット養成学校ができたらしく、人気となっている模様。
英語は当然MUST。

グッド・フライト、グッド・ナイト──パイロットが誘う最高の空旅 (ハヤカワ・ノンフィクション) 単行本(ソフトカバー) – 2016/2/24 マーク・ヴァンホーナッカー



p21

私にとってパイロットに勝る職業などない。
地上に、空の時間と交換してもいいような時間があるとは思えない。

P33

プレイス・ラグはすべての旅に共通する現象だ。
出発地と目的地の環境が違えば違うほど、旅立ったのが過去のことに思えてくる。
空の旅はその最たるものである。


p46

ポジション レポート

P47

例外としてムンバイ近郊に”沈黙の塔”とう制限空域がある。パールシーが宗教上の儀式として、遺体を安置し、大型の猛禽類に食べさせるための塔が建つ場所だ。
いわゆる”鳥葬”と呼ばれる習慣を守るための制限区域である。

P54

例えば私は、国の大きさをジェット機が通過するのに要する時間で考えるようになった。アフリカ上空を初めて飛んだときに、まず驚いたのはアルジェリアの広さだ。
アフリカ大陸最大の国だけあって北から南まで飛行するのに、2時間ちかくかかる。
ノルウェーにも驚かされた。ロンドンから日本へ至るルートはノルウェーを縦断するのだが、小さな国がひしめくヨーロッパ大陸の北部で、ノルウェーにはたっぷり2時間分の国土があるのだ。
フランスはよく横断する角度で概ね1時間の広さで、テキサス州やモンタナ州を飛行するんとだいたい同じである。
ベルギーは、ちょうどいい追い風があれば15分で通過できる。
ロシア上空を通るルートはだいたい7時間かかるが、やはりここは数字ではなく昼の長さ、夜の長さに等しいと考えたい。




p57

世界を広く見聞したいと願うなら、たとえ飛ぶことが何より好きでなかったとしても、パイロットになるべきだ。アルフレッド・ド・ミュッセはヴィクトル・ユーゴーに捧げたソネットのなかで、”ロウ・ワールドにいるうちに”なんでもやってみたほうがいい、そうすれば何が好きかわかるだろうと書いている。



p70

空を飛んでいると世界中に打たれた句読点またはアスタリスクを発見して愉快な気持ちになる。
この場合の句読点というのはナブエイドのことで、パイロットでもなければ存在していることすら気づかないだろう。

地上には無数のナブエイドがあり、空の道しるべとなる電波を発している。

電波が登場する前、パイロットを導くのは光だった。

光は空の灯台として、道しるべの役割を果たしていたのはもちろんのこと、スペインの無敵艦隊らの来襲を知らせたり、戴冠や聖年といった行事を記念して灯されることもあった。

パイロットなら誰でも、手動でナブエイドの周波数を設定し、現在地を割り出すことができるが、現代の航空機はナブエイドの電波を自動で捜索する。



P85-6

パイロットはどうやって自分の位置を知るのだろう?


GPS受信機以外の装置で

慣性航法装置がある。

まず停車した車に、目隠しをして乗っているところを想像してほしい。車が動きだし、高速道路を走行するくらいのスピードで真っ直ぐに走る。すると一時間後には、出発地点からおよそ100キロメートル移動したと推測できる。次に90度方向を変えて、別の方向へ30分移動したとする。現在地をはじきだすには、頭の中で直角三角形を描けばいい。人間の耳の前庭神経と同じで、慣性航法装置は加速と回転を感知する。
加速を測定するのが加速度計で、仕組みはさほど難しくない。ところが、回転を測定するジャイロスコープは、複雑な装置である。もともとは機械式ジャイロスコープだったが、(機械式の原型である回転式ジャイロスコープは、世界最古のおもちゃである駒の原理を応用した)、現代の旅客機は回転盤や駒の代わりに光を使う。

光を使って回転を測定する機器を”リングレーザージャイロ”と呼ぶ。
光路内を進むレーザービームの速度が、光路自体の運動にかかわらず一定であることを利用した測定器だ。。。。。。

慣性航法装置は非常に繊細で、フライトの前に必ず、数分間の完全な静止と集中のなかで大地を感じなければならない。この禅のような、飛行機恐怖症の人が搭乗前に行う瞑想にも似たひとときをアライメント(調整)と呼ぶ。
。。


P245
ロンドンからニューヨークの中間あたりを飛行していたときのこと。
共通周波数で、アメリカ人パイロットが別の航空会社のある便を呼び出した。
アメリカ人パイロットは、自分の妻と娘がそちらの便に搭乗しているのだと説明した。
「客室乗務員に頼んで、さほ遠くない空から私がよろしく言っていたと妻に伝えてくれませんか」と。
フランス人パイロットは了解した。
そして数分後に聞こえてきたのは、フランス人パイロットの声でも、アメリカ人パイロットの声でもなく、あんとアメリカ人パイロットの妻の声だった。
フランス人パイロットが、彼女をコクピットに招き、ヘッドセットを与え、旦那さんに話しかけるように促したのだった。
響いてきた妻の声に、すぐさまアメリカ人パイロットが応じた。
照れ笑いのまじった声が、大西洋上の巨大な円の中にいるすべてのパイロットの耳に響いた。
アメリカ人パイロットの人生において、家庭と仕事がこんなふうに重なることは二度とないだろう。
青い海の上にいっとだけ、夫婦を結ぶ雑音まじりの電波の橋がかかった。


P271

旅客機に乗っているとき、太陽が自分の座っている側と反対に沈むことがあったら、落胆せずに窓の外に目を凝らしてほしい。上方の空はほぼ白く、視線をおろすにつれてピンク色になり、さらに下へ目をやるとえもいわれぬ青になる。青を表す語彙を全部合わせても足りないほどの、見事なグラデーションが広がっているはずだ。

パイロットになったばかりの頃は私も気づかなかったのだが、その青には夜の始まりが混じっている。
そのなものを見られると知っていたら、高校を卒業してすぐにパイロットの目指したかもしれない。
夜の始まりはとても暗い青で、日の入りの方角と反対側の水平線付近に広がっている。
ある天文学者の母親は、それを「夜の毛布」と呼んだ。
私たちの目の前で、夜の毛布が世界を覆っていく。
崇高なダークブルーの帯は、沈みゆく太陽から離れれば離れるほど幅が太くなる。
地球の影そのものが、空気のスクリーンに投影されているのだ。
この現象は”ダーク・セグメント”と呼ばれることもあり、条件が合えば地上でも観察できる。

P277
「ネクスト・リポート・ディ・イクウェーター」(次は赤道通過を通報せよ)
管制官の指示を聞いてぞくぞくした。
地球を南北に分ける線を通過して、南側の半球に入るのだ。しかもそれを報告することが、自分の仕事なのだ。
。。。
コックピットでは緯度経度を表示する機能を使う。
表示される数字がどんどん変わっていく。旅客機のエンジンと同じく、飛行しているかぎり、更新がとまることはない。
緯度を表す緑の数字がゼロに近づき、Nの表示がSに変わった。
北極からのカウントダウンが南極までのカウントアップに切り替わったのだ。
ノイズ混じりの対空無線で
「ポジション・イクウェーター(赤道通過)」を報告する。
「ラジャー、ラジャー」
雑音の向こうから、管制官が答えた。
「グッド・フライト、グッド・ナイト」


P280

そういえば常々思っていたのだが、”ウィルコー”はどうしてビジネス用語として定着しないのだろう。
”あなたに従います”(Will comply)”という意味の軍事用語で、対空無線でよく聞かれる。
「ウィルコー」(仰せのとおりに実行します)」と言われたら、取引相手も気分がいいと思うのだが。


P293


アレクサンダー・グラハム・ベルは、航空機はいずれ1000個のレンガを載せて離陸できるようになると予言した。

1000個のレンガの重さは2トンを少し超える。

747では、通常のパントリー・ウェイト(乗客も貨物も考慮せず、ただ食料と飲み物と関連物資だけの重さ)が6トンで、レンガ数千個を超える。

747の平均的なペイロード(乗客や貨物を含む有効搭載量)となると30トンから40トンだ。

航空機を設計する際には常に重量を計算しなければならない。
747の原型を設計した技術者は、軽量化のためにせっかく考えた機能を没にされて涙を流したという。

飛行中、旅客機の重量は劇的に変化する。
飛ぶために燃料を消費するからだ。

一般的な自家用車の燃料タンクの容量は55リットルで、重量は40キログラムほど。
ざっくり計算すると車体重量の40分の1だ。

一方、シンガポールからロンドンに向けて離陸するジェット機の重量を380トンとすると、有効搭載量が10分の1なのに対して、5分の2にあたる150トン以上が燃料であり、着陸するまでにそのほぼすべてが消費される。

燃料消費による機体重量の変化はめんみつに計算されている。

例えば長旅に出かけるときスーツケースに5個の本を入れたとしよう。
いろいろな計算方法があるが、
5冊の本を運ぶためには1冊もしくは2冊分にあたる重さの予備燃料が必要となる。

現実世界でも、乗客の数や貨物の量が土壇場で増加することがあり、増加したペイロードを運ぶためには数トン分の燃料が余分に必要になる。

追加される重量が燃料そのものという場合もある。

目的地で霧や降雪が予報されれば、到着時刻の遅れが予想されるため、そのルートで通常必要とされるよりも多めに燃料を積む。

天候が悪くなくても、目的地上空で30分ほどの空中待機ができるように、40分飛べるだけの燃料を積む。

10分に追加は余分な燃料を世界の果てまで運ぶための燃料である。

飛行距離が長くなればなるほどこうした燃料の割合が増え、ある時点で、一回の長距離フライトと2回の短距離フライトの燃費が逆転する。

パイロットになるまで、航空機の重量が、旅の残り時間や距離と比例するとは考えてもみなかった。

機体重量は高度と速度にも影響を及ぼし、状況によっては旋回時のバンクをも制限する。

着陸速度の計算においてはとくに重要だ。

普通は重いと動きが遅くなると思うかもしれないが、翼にかかる揚力は速度によって決まるため、むしろ機体が思いほど速く飛ばなければならない。

747では、着陸時の重量(貨物、乗客、残燃料)が3トン増えるたびに1ノットの加速が要求される。

着陸が遅れて空中待機する場合は重量が減り続けるため、3トン減るたびに着陸速度を1ノットずつ減らさなければならない。