価格を下げてシェアの拡大をはかるのが日本企業の戦略だった(撮影:今井康一)
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今年初めから導入された株価指数・JPX日経インデックス400の銘柄選択は、ROE(自己資本利益率、株主資本利益率とも)、営業利益、時価総額の3つを基にした定量的な指標を利用して行われている。この株価指数を年金積立運用独立行政法人(GPIF)が、運用成績の指標の一つに取り入れたことから、ROEへの注目度は一段と高まっている。
安倍政権の「日本再興戦略、改訂 2014 -未来への挑戦-」でも、「日本企業の『稼ぐ力』、すなわち中長期的な収益性・生産性を高め・・(中略)・・グローバル水準の ROE の達成等を一つの目安に」するとうたわれている。
■ 規模拡大を重視し、ROAの低い日本企業
決算期になると「●期連続増収増益」といった見出しが新聞・雑誌の紙面を賑わせる。企業の売り上げや利益、従業員数や資産など、規模が拡大して成長していくのはよいことだという意識は、日本の中ではいまだに強い。一方、規模が拡大しない企業は、停滞した活力のない企業とみなされてしまう傾向がある。
日本経済が右肩上がりで急成長を続けていた時代には、企業の成長性を重視することには大きな意味があったが、成熟した現在の日本経済では考え方を変える必要があり、ROEの重視はこうした量から質への転換の流れを象徴するものだ。
2013年度の経済財政白書では、日本企業の経営効率の低さが問題にされていた。日本企業は、米国やドイツの企業と比較すると、収益力の指標であるROA(総資産利益率)やROEが低い。例えばROAについて比べてみると、日本企業は米国企業よりもかなり低く、ドイツ企業と比べても20年以上にわたってほぼ一貫して下回っている。
安倍政権の「日本再興戦略、改訂 2014 -未来への挑戦-」でも、「日本企業の『稼ぐ力』、すなわち中長期的な収益性・生産性を高め・・(中略)・・グローバル水準の ROE の達成等を一つの目安に」するとうたわれている。
■ 規模拡大を重視し、ROAの低い日本企業
決算期になると「●期連続増収増益」といった見出しが新聞・雑誌の紙面を賑わせる。企業の売り上げや利益、従業員数や資産など、規模が拡大して成長していくのはよいことだという意識は、日本の中ではいまだに強い。一方、規模が拡大しない企業は、停滞した活力のない企業とみなされてしまう傾向がある。
日本経済が右肩上がりで急成長を続けていた時代には、企業の成長性を重視することには大きな意味があったが、成熟した現在の日本経済では考え方を変える必要があり、ROEの重視はこうした量から質への転換の流れを象徴するものだ。
2013年度の経済財政白書では、日本企業の経営効率の低さが問題にされていた。日本企業は、米国やドイツの企業と比較すると、収益力の指標であるROA(総資産利益率)やROEが低い。例えばROAについて比べてみると、日本企業は米国企業よりもかなり低く、ドイツ企業と比べても20年以上にわたってほぼ一貫して下回っている。
日本企業の行動原理は市場シェアの拡大を目指すことだという点が指摘されてきた。急速に市場が拡大するという状況下では、現在の利益を犠牲にしても、将来により大きな利益を得られるようにシェアを拡大しておくことが、長期的に見れば有利だった。
■ シェア拡大のためには薄利多売が戦略に
ライバル会社との競争に打ち勝って市場でのシェアを拡大する手法として使われてきたのが、競争相手よりも安く売るという方法だ。ライバル会社が製造原価90円の製品を100円で売っているなら、こちらは同じ製品を95円で売る。販売数量が同じでは利益幅が小さくなって販売費用を賄えなくなってしまうので、利幅の縮小分は販売数量を大幅に伸ばしてカバーする。つまり薄利多売という経営戦略である。
企業の財務分析の本に書いてあるように、
ROA(総資産利益率)=利益÷総資産×100(%)
であり、さらに、以下のように分解できる。
ROA=利益÷売上高×売上高÷総資産×100(%)
したがって、ROAは、売上高利益率(=利益÷売上高、つまり利幅)と総資産の回転率(=売上高÷総資産)の二つの要素に分けて考えられる。日本企業のROAが低いのは、売上高利益率の低さに大きな原因がある。米国企業が100円の売り上げで10円の利益が出るのに対して、日本企業は同じ100円売り上げても利益が2~3円しか出ないのだが、それは日本企業が薄利多売という戦略で発展してきたからだ。
国内市場が成熟した今日では、将来の利益を求めて現在の利益を犠牲にするような経営をしても、将来その投資を回収できるとは限らない。日本企業が得意としてきた「薄利多売」という経営戦略が低収益性という問題につながっているのであり、これまでの量の拡大とは違う質の改善への方向転換が求められている。
■ シェア拡大のためには薄利多売が戦略に
ライバル会社との競争に打ち勝って市場でのシェアを拡大する手法として使われてきたのが、競争相手よりも安く売るという方法だ。ライバル会社が製造原価90円の製品を100円で売っているなら、こちらは同じ製品を95円で売る。販売数量が同じでは利益幅が小さくなって販売費用を賄えなくなってしまうので、利幅の縮小分は販売数量を大幅に伸ばしてカバーする。つまり薄利多売という経営戦略である。
企業の財務分析の本に書いてあるように、
ROA(総資産利益率)=利益÷総資産×100(%)
であり、さらに、以下のように分解できる。
ROA=利益÷売上高×売上高÷総資産×100(%)
したがって、ROAは、売上高利益率(=利益÷売上高、つまり利幅)と総資産の回転率(=売上高÷総資産)の二つの要素に分けて考えられる。日本企業のROAが低いのは、売上高利益率の低さに大きな原因がある。米国企業が100円の売り上げで10円の利益が出るのに対して、日本企業は同じ100円売り上げても利益が2~3円しか出ないのだが、それは日本企業が薄利多売という戦略で発展してきたからだ。
国内市場が成熟した今日では、将来の利益を求めて現在の利益を犠牲にするような経営をしても、将来その投資を回収できるとは限らない。日本企業が得意としてきた「薄利多売」という経営戦略が低収益性という問題につながっているのであり、これまでの量の拡大とは違う質の改善への方向転換が求められている。