「ミリ秒」(ミリは1000分の1)や
「マイクロ秒」(マイクロは100万分の1)
とされたスピードが、いまや
「ナノ秒」(ナノは10億分の1)
まで達したと言われる。
HFTによる取引は東証でも5割超の売買シェアを占めるが、わずかな時間差を利用した収益機会の追及は、市場が予期せぬイベントに直面した際、一方向の流れを加速する。
「売りが売りを呼ぶ」ヘッジファンドの悪夢
エコノミスト(10NOV15)より
フラッシュ・ボーイズ 10億分の1秒の男たち 単行本 – 2014/10/10
NY証取、「フラッシュ・ボーイズ」取引所の公平性疑問視
ニューヨーク証券取引所(NYSE)は、IEXグループによる取引所新設計画について、提案されている規則が不透明で不公平だとして厳しく非難した。
米インターコンチネンタル取引所(ICE)傘下のNYSEグループは12日、証券取引委員会(SEC)に宛てた意見書で、IEXグループが提案した規則は、取引所がどのように運営されるのかを詳細に説明していないと述べた。また、同グループを象徴する機能――高頻度トレーダーたちを減速させるためのスピードバンプ(自動車の速度を落とさせるために道路上に設けられた帯状の隆起部)――は一部のトレーダーを他者よりも有利にする可能性があると指摘した。
「売上高を伸ばすために、実際には脂肪分を減らしていないおいしいヨーグルトを販売するノンファットヨーグルト店のように、IEXは公平で簡素、透明性のある市場を唱える一方、IEXを不公平で複雑、不透明な取引所にする規則を提案している」とNYSEは書簡で主張した。
NYSEによる批判のわずか2週間前には、私設の電子取引所を運営する米BATSグローバル・マーケッツがIEXのスピードバンプ機能を「不公平で不当に差別的」だと批判している。
両社の批判の矛先は、IEXの運営する証券会社が他の取引所に注文を転送する役割を担うことで他の証券会社よりも有利に立つ可能性に向けられている。
NYSEは「アウトバーン(ドイツの高速自動車道)で車の速度に関して心配するのは妥当なことかもしれないが、一部の車だけが減速したり、ライトを消したりすれば、アウトバーンの安全性は高まるどころか、大惨事となってしまう」と述べている。
一部の高頻度トレーダーが先進技術を使って他者を出し抜くなか、IEXは、3億5000万分の1秒で処理されるマッチングエンジン(取引システム)に入ってくる注文を遅らせるだけのスピードバンプは、普通の投資家や企業により公平な条件を提供すると主張する。NYSEのレターについてコメントを要請したが、IEXがこれに即座に応じることはなかった。
マイケル・ルイス氏の著書「フラッシュ・ボーイズ 10億分の1秒の男たち」が出版された2014年、IEXは大評判となった。というのも、米国の株式市場がどのように「不正に操作され」、大手銀、取引所、高頻度トレーダーに有利な仕組みとなっているかを世に知らしめた同書では、IEXとその創業者たちがより公平な取引所を創設しようとするヒーローとして描かれていたからだ。