http://carview.yahoo.co.jp/article/column/20150924-20102603-carview/2/
「ディフィートデバイス」とは何か?
VWが指摘を受けたのは、「Defeat Device(ディフィートデバイス=無効化機能)」と呼ばれる違法プログラムを使用した疑惑だ。ディフィートデバイスは排出ガス規制に適合させるためのシステムを、試験の時だけ作動させ、ユーザーが実際に使う時には停止や作動を制限する(defeat:打ち負かす)プログラムで、欧米では反社会的行為として排出ガス規制の中で禁止が明文化されている。
なぜ違法プログラムを使ったのか? その背景には“世界で最も厳しいアメリカの排ガス規制”にありそうだ。現在の米・日・欧の排ガス規制の厳しさは同程度などと言われるが、実はNOxの規制値では、アメリカは日本よりも二倍も厳しい。さらに、アメリカでは使用開始後も長期に渡って排ガス性能が規制値をクリアしていることをモニターする義務まである。
アメリカで売られる低品質の軽油が技術者を悩ませる
ディーゼル技術者にとっては、アメリカの一部地域で売られている低品質の軽油も悩みの種だ。というのは軽油に含まれる硫黄(サルファ)が「NOx吸蔵触媒」に使われる白金(プラチナ)を被毒させてしまうのだ。さらにセタン価も低い。セタン価とはガソリンのオクタン価と同等の意味を持ち、セタン価が低いと、ディーゼル特有のノッキングが発生しやすく、排ガス性能に影響する。ちなみに日本では2007年頃から世界でもっともクリーンな軽油が提供されるようになっている。
つまり、アメリカでクリーン・ディーゼルを市販するのはかなり高度なエンジン制御システムが必要となる。実は過去にも、アメリカの厳しい排出ガス規制がクリアできないことから、多くのメーカーがディフィートデバイスを使っていたという歴史があるのだが、現在は少なくとも今回のVWの疑惑を除けば、使われていないはずだ。しかし、アメリカではメルセデスやBMWもクリーン・ディーゼルを販売しているので、排ガス規制が厳しいから違反したとはVWも言えないだろう。