●高い法人税は実情とはかけ離れている
法人企業の所得に対する国税の法人税、地方税の法人住民税、法人事業税の3つの税を合計した法定正味税率は34.62%(標準税率)。確かに、米国の40.75%に次いで世界で2番目に高い。
2015年度は32.11%、2016年には31.33%以下の予定。
国の稼ぎ頭である大手企業は、各々がグローバル市場を舞台に次第に無国籍化してゆき、税制の欠陥や抜け穴を巧みに活用して節税を行い、時には地球的スケールでの課税逃れを行っている。これが、日本の税制の空洞化及び財政赤字の原因となっているのだ。
14年3月期の当期利益が上位100位以内のある企業から、実際の納税額の負担割合である「実効税負担率」は著しく低い。
1期のみの試算ではあるが、実効税負担率がマイナスを示す企業が4社もあり、
1%に達しない極端に低い企業が実に10社、
5%未満の企業も2社ある。
5-10%、15%、20%未満の企業がそれぞれ8社ある。
安部政権が将来的な引き下げ目標として掲げている20%台を、すでに40社が下回っている。
比較的多くの法人税を払っている著名な企業でも、20%台、30%に達していない企業が18社ある。
高いのは法定正味税率であって、実際の税負担は驚くほど低い。
●大手の税負担率は中堅、中小よりはるかに低い。
資本金100億円超の大手企業だたお、法人税等合計税額の平均負担率は、外国税額を含めてもわずかに17.20%と極端に低い。
法定正味税率38.01%の半分にも達していないのだ。
これに対し、資本金1億円超~5億円以下の中堅・中小企業が37.92%負担しており、限りなく法定正味税率に近い。
この異常事態は、企業優遇税制である租税特別措置の政策減税が特定の大企業に集中していることと同時に、法人税制の仕組みそのものの欠陥に負うところが大きい。
●米大学教授の”実験台”だった戦後の法人税制
持ち株会社に対する課税
①タックス・イロージョン(課税の浸食化)
②タックス・シェルター(課税の隠れ場)
③タックス・ギャップ(税務行政の機能不全)
の3つによって、課税ベースの約4割が削れれていると見ている。
★今、急務なのは崩壊した法人税制の「再建」であって「減税」ではない。
★国の稼ぎ頭である大手企業が、その儲けにふさわしい、各社の力に応じた無理のない税を国に払い、国民経済と国家財政に貢献する健全な税制、そして社会の仕組みの建設を切に願いたい。